アシスタントナース(AIN)として働くためには、資格を取得した後に施設への就職活動が必要になります。就職活動の中でも特に重要なステップが「面接」です。
私がオーストラリアで就職活動を始めた当初は、人前で自信を持って英語を話すことに全く慣れておらず、とても緊張したのを覚えています。ですが、緊張するのは当然です。面接は母国語で受けるとしても、誰もが緊張する場面です。
多種多様な国の方が働くオーストラリアでの面接は、自分のスキルや知識だけでなく、考え方や人柄、他者とのコミュニケーション能力まで見られることが多いです。お互いの文化を尊重し合う姿勢や、適切なコミュニケーションをとることがとても大事だからです。
この記事では、アシスタントナースの面接で実際によく聞かれる質問と、その答え方のコツを、実体験も交えながら詳しく紹介します。
海外初心者でも自信を持って面接に臨める様、英語での質問に対する準備や、好印象を与える面接マナーについてもまとめているので、これからオーストラリアで就職を目指す方にも役立つ内容になっています。
面接でチェックされる主なポイントとは?
面接官(採用担当者)は、あなたの次のような資質や適性を総合的に評価しています:
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思いやりや誠実さなどの人間性
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チームワークを大切にできるか
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英語でのコミュニケーション力(実践レベル)
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過去の実習や職歴からの学びと実績
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施設の方針や文化に合う人材かどうか
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節度のある服装や髪型か(髪が長い場合は結ぶのが好印象です)
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笑顔があるか
面接時の評価には、実習先での態度や積極性に関するフィードバックも影響している可能性があります。そして、英語力よりも「自分から動こうとする姿勢」や「丁寧な態度」が高く評価されているケースもあります。
英語に自信がなくても、笑顔であいさつしたり、利用者に積極的に話しかける姿勢がとても大切です。
面接でよくある質問
Q1. なぜアシスタントナースになろうと思ったのですか?
この質問は聞かれる可能性が高いので、必ず自分の答えを用意しておきましょう。返答を一言一句覚える必要はありません。キーワードを覚えておいて、英語でそのキーワードを繋げて説明できるようにしておきましょう。
答え方のポイント: 自分の経験やきっかけを含めて、なぜこの職業に興味を持ったかを自然に伝えましょう。
例文(日本語): 「学生時代にボランティア活動で高齢者施設を訪問したことがあり、人と関わる中で感謝される喜びを感じました。この経験から、介護や支援の仕事に関心を持ち、アシスタントナースを目指しました。」
例文(英語): “I visited a nursing home as a volunteer and found joy in supporting and interacting with elderly people. That experience inspired me to pursue a career as an Assistant in Nursing.”
Q2. 実習や仕事で大変だったことはありますか?それをどう乗り越えましたか?
こちらの質問は私が実際に受けました。実習先へ就職希望をする際は、必ず実習についての質問をされます。実習が終了したら、実習での反省点(改善点も一緒に)や良かった点を振り返っておきましょう。『実習について聞かれたらこれを話そう。』と言ったように、印象に残ったエピソードを説明できるように準備しておくことをお勧めします。
答え方のポイント: 具体的なエピソードを用いて、自分がどのように考え、行動したかを示しましょう。
例文(日本語): 「実習中、認知症の利用者さんが突然怒り出して戸惑ったことがありました。その時は落ち着いて声をかけ、スーパーバイザーに報告しました。チームと連携することで状況を落ち着かせることができ、協力の大切さを学びました。」
例文(英語): “During my placement, a resident with dementia suddenly became upset. I calmly spoke to her and reported to my supervisor. With support from the team, we were able to calm the situation. This taught me the importance of teamwork.”
Q3. チームで働く上で大切にしていることは何ですか?
これはあなたの過去の経験を踏まえ、自信を持って答えられるようにしましょう。AINとして働くには、他職種との連携や、スタッフ間の連携がとても大事です。臨機応変な対応が常に求められるので、自分だけの判断で働くのではなく、正しい情報共有や、コミュニケーションをとる事がとても大事になります。
答え方のポイント: チームワークに関する自分の考えや、実際に工夫していることを話すと良い印象になります。具体的な例を一つ考えておくと安心です。
例文(日本語): 「チームで働くときは、常に報告・連絡・相談を意識しています。小さなことでも共有することで、トラブルを防ぎ、安全なケアができると考えています。」
例文(英語): “I value communication in a team. I believe sharing even small updates helps prevent issues and provides safer care.”
Q4. 英語での対応に不安はありますか?
英語についての質問は私もされました。今どのように英語勉強に取り組んでいるのか、今後どのように英語力をつけていくのか。英語が完璧である必要はありません。ですが、分からないことを分からないままにしない、確認を怠らない事が、仕事の信頼へ繋がっていきます。その旨を向上意欲と合わせてアピールしていきましょう。
答え方のポイント: 英語力に自信がなくても、努力している姿勢と「伝える意思」が大切です。
例文(日本語): 「まだ完璧に話せるわけではありませんが、毎日英語の勉強を続けており、実習でも徐々に自信がついてきました。分からない時には、必ず確認するようにしています。」
例文(英語): “I’m still learning English, but I study every day and have gained confidence through my placement. When I don’t understand, I make sure to ask and confirm.”
Q5. 将来の目標やキャリアの希望を教えてください
自分の将来の目標やキャリアのために、AINとして働くことがのように関係してくるのかを考えて伝えましょう。
答え方のポイント: 自分のビジョンを持っていることは大きな強みです。長く働きたい意欲や学び続けたい姿勢を伝えましょう。
例文(日本語): 「まずはアシスタントナースとして経験を積み、将来的にはEnrolled Nurseの資格も取得したいです。利用者さんにとって安心できる存在になれるよう、日々成長していきたいと思います。」
例文(英語): “I want to gain experience as an AIN first, and eventually become an Enrolled Nurse. I hope to be someone residents feel safe and comfortable with.”
筆者が実際に受けた面接質問とその対応例
Q1. Aged Care Quality Standards(エイジドケアスタンダード)を全て言えますか?
こちらのAged Care Standardsは丸暗記必須です。これが答えられないだけで落とされてしまうこともあります。そして覚える際は、それが最新の情報であることを確認しましょう。
答え方のポイント: すべてのAged Care Standardsを答えられるように正確に覚えておきましょう。それぞれがどのような意味を指しているかも要チェック。
現行(2024年まで)のスタンダード
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Consumer Dignity and Choice(消費者の尊厳と選択)
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Ongoing Assessment and Planning with Consumers(継続的な評価と計画)
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Personal Care and Clinical Care(個別ケアと臨床ケア)
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Services and Supports for Daily Living(日常生活のためのサービスと支援)
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Organisation’s Service Environment(サービス環境)
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Feedback and Complaints(フィードバックと苦情)
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Human Resources(人的資源)
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Organisational Governance(組織のガバナンス)
2025年7月1日より新しく適用されるスタンダード
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The Person(個人の人権)
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Organisational Governance(組織のガバナンス)
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Safe and Quality Care(安全で質の高いケア)
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Care Assessment and Planning(ケアの評価と計画)
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Service Environment(サービス環境)
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Feedback and Complaints(フィードバックと苦情の対応)
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Human Resources(人的資源)
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Continuous Improvement(継続的な改善)
最新情報の確認はこちらから
この情報は2025年7月1日に適用される新法律に基づく予定です。基準は今後変更される可能性もあるため、最新の情報や詳細は、下記の公式サイトから確認してください。
Q2. SIRS(Serious Incident Response Scheme)について説明してください。
SIRS(Serious Incident Response Scheme)は、オーストラリアの高齢者ケア施設で導入されている重大インシデント報告制度です。虐待、ネグレクト(放置)、無断外出などの深刻な事件が起きた場合、施設が入居者の安全を守り、速やかに当局に報告するための仕組みです。
SIRSには**Priority 1(緊急報告)とPriority 2(30日以内報告)**の2種類があります。
▶︎Priority 1(24時間以内の緊急報告)
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入居者の命・安全に直接関わる重大インシデント
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例:
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身体的虐待(暴力)
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性的虐待
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危険を伴う失踪(夜間や医療管理が必要な状態での無断外出)
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重傷事故(骨折、重大な転倒など)
▶︎Priority 2(30日以内の報告)
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緊急性は低いが、入居者の権利侵害や適切なケアの不足に関わる事案
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例:
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言葉の暴力や心理的虐待
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不適切なケアや差別的な対応
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食事や衛生面の管理不足
▶︎現場スタッフが行うべきこと(流れ)
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入居者の安全確保(応急処置や医療支援が必要な場合はすぐ対応)
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上司・マネージャーへ報告
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インシデント報告書を記録(施設のシステムに入力)
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Priority 1の場合:上司が24時間以内に当局へ報告
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Priority 2の場合:施設内で改善策を検討し、30日以内に報告
答え方のポイント: 「重大事故対応制度」として、報告義務・対応の流れ・対象インシデントを簡潔に説明しましょう。
例文(英語): “SIRS is a mandatory framework in Australia to manage and report serious incidents in aged care. I always ensure the resident’s safety first, report to my supervisor, and assist with documentation. Urgent cases are reported within 24 hours, and other cases within 30 days.”
日本語の解説:SIRSは、オーストラリアで高齢者介護施設における重大インシデントを管理・報告するための義務的な制度です。
私は常に入居者の安全を最優先に確保し、その後スーパーバイザーに報告し、文書作成をサポートします。
緊急性の高いケースは24時間以内に、その他のケースは30日以内に当局へ報告します。
詳細は以下の政府公式サイトをご確認ください:
Q3. なぜあなたを雇うべきだと思いますか?
こちらの質問をされた時は、少し慌てました。就職先の理念や働き方にあった人材であることを強くアピールしましょう。私は、看護師としてのバックグラウンドがあったため、知識の広さやアセスメント能力をアピールしました。具体的には、誰よりもたくさん時間を過ごすAINとして、レジデントのADLの変化や異常についていち早く報告し、ADLの改善に誰よりも貢献できることを伝えました。
答え方のポイント: 自分の強みや実習での姿勢を、自信を持って伝えましょう。
例文(英語): “I have strong communication skills, hands-on experience from my placement, and a deep respect for person-centred care. I am reliable, always eager to learn, and ready to support both staff and residents.”
Q4. 朝のシャワー介助をレジデントに提案する場面のデモンストレーション
このようなデモンストレーションはいくつかパターンがあるため、事前に準備しておき落ち着いて実践できるようにしておきましょう。
・レジデントがケアを拒否した場合→意見を尊重する
・レジデントが転倒した場合→助けを呼ぶ、その場を離れない
・レジデントが出された料理を拒否した→希望を聞き、キッチンスタッフに確認する
例文(英語): “Good morning, Mr. Smith. It’s your shower day today. Would you like to have your shower now or a little later?”
(レジデントが拒否した場合) “That’s completely okay. Would you like me to check back with you in an hour, or would you prefer a sponge bath today? Please let me know when you feel ready.”
日本語の解説: 入浴を拒否された場合でも、本人の意思を尊重し、無理強いしないことが大切です。別の方法(例:清拭)を提案したり、時間を置いて再度確認するなど、柔軟な対応を行いましょう。優しく声かけを行い、安心感を与えることがポイントです。
Q5. レジデントが転倒した場合の対応
こちらはその場を離れないことが大切です。助けを呼ぶ際は、近くの緊急コールボタンを押しましょう。レジデントには触れず、看護師が来るのを待ちましょう。看護師が到着した後は、必ずフルホイストを使用し安全な場所へ移動し、全身状態を観察します。
答え方のポイント: 安全確認、報告、記録、声かけの順に落ち着いて対応すること。
例文(英語): “First, I check for safety and do not move the resident unless it’s dangerous to leave them there. I call for help, reassure the resident, notify the nurse, and follow the reporting procedure including documentation.”
英語の質問に備えるためにできること
1. よくあるフレーズを繰り返し練習する
→ 面接や現場でよく使うフレーズを声に出して繰り返すことで、瞬時に口から出るようになります。特に「自己紹介」「経験の説明」「よくある質問の答え」などは定番なので、短い文を繰り返し練習すると自信がつきます。
2. 簡単な英語でも丁寧に、相手に伝える意識を持つ
→ 難しい単語を使う必要はありません。シンプルでも「Please」「Thank you」「I would appreciate it」などを添えるだけで印象が良くなります。内容よりも態度が評価される場面が多いです。
3. ジェスチャーや表情も使って伝える意志を表現する
→ 言葉だけでなく、手の動きや表情で「相手に伝えたい気持ち」を表すと、多少英語が拙くてもコミュニケーションがスムーズになります。相手に安心感を与えられるのもポイントです。
4. 答えを全文覚えるより、キーワードを覚えておく
→ 丸暗記は一度詰まると全部飛んでしまう危険があります。キーワード(例:experience, teamwork, problem-solving など)だけ覚えておけば、自然な流れで自分の言葉で答えられるようになります。
5. 質問に詰まったときの切り返しを用意しておく
→ 答えがすぐに浮かばないときは、「Thank you for the question. Let me think for a moment.」(ご質問ありがとうございます。少し考えさせてください。)のように一度丁寧に時間を作るのがポイント。以下のようなフレーズを覚えておくと安心です。
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“Thank you for the question. Let me think for a moment.”(質問ありがとうございます。少し考えさせてください。)
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“That’s a good question. I just want to gather my thoughts.”(いい質問ですね。少し整理します。)
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“I appreciate the question. Could I have a moment to think about it?”(質問ありがとうございます。少し考える時間をいただけますか?)
面接で好印象を与えるマナーと服装
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清潔感のある服装(白シャツ+黒パンツなど)
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髪は整える、長い場合は結ぶ、過度な香水・アクセサリーは避ける
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あいさつは笑顔ではっきりと
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相手の目を見る(アイコンタクト)
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緊張しても焦らず、ゆっくり丁寧に話す
- 指定された時間を守る(オーストラリアの交通は遅延が多いので、早めに着けるようにしましょう)
面接対策のために今からできること
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模擬面接を誰かに手伝ってもらう(チャットGPTやELSAスピークなどのアプリを利用して面接の練習を行うこともできます)
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よくある質問を紙に書き、自分なりの答えを用意する
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面接を受ける施設のホームページを読んでおく
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自分の強みを声に出して説明する練習をする
まとめ
アシスタントナースの面接では、完璧な英語や模範解答よりも、「その人らしさ」や「まじめに学び続ける姿勢」が重視されます。事前の準備と練習によって、自信を持って本番に臨むことができるはずです。
当時英語を話す自信が全くなかった私は、面接後に『ああ、絶対落ちただろうな』と落ち込みました。ですが、英語力ではなく人柄や態度を評価していただき無事に就職する事ができました。“第二言語で面接に挑戦する“ということは誰にとっても挑戦的なことだと思います。あなたの思いや熱意が伝わるよう、誠実な態度と笑顔で、面接に挑みましょう。
応援しています!!
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