私が初めてオーストラリアでAIN(Assistant in Nursing)として実習に行ったときのことです。あるレジデントの方に「このシリアルじゃなくて、あれがいい」と言われた瞬間、頭が真っ白に。聞きなれないシリアル名に戸惑い、焦ってしまったのを今でも覚えています。
そんな経験から、今回はオーストラリアのエイジドケア施設でよく出る食事、私たちAINの食事に関する役割、そして覚えておくと便利な食材・英語フレーズについてご紹介します。
日本とは少し異なるオーストラリアのエイジドケアでの食事提供。実際に働いている立場から、どのようなご飯が、どんな形式で提供されるのか、私たち介護士(AIN: Assistant in Nursing)の役割、よく使われる食材や料理名、現場で頻繁に使う英語のフレーズなどをわかりやすく紹介します。特にこれから現場に入る実習生や、新しくエイジドケアで働く方の参考になれば嬉しいです。
エイジドケアでの食事スケジュールと形式
オーストラリアのエイジドケアでは、1日3食(朝食、昼食、夕食)に加えて、モーニングティーとアフタヌーンティーが提供されるのが一般的です。すべての食事は栄養士によって監修されており、高齢者の健康状態や嚥下能力、持病などに配慮されたメニューが日々工夫されています。毎日の食事は、入居者の生活の楽しみのひとつでもあり、季節の素材を使ったり、宗教や文化に配慮したメニューが取り入れられることもあります。
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朝食(Breakfast)
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モーニングティー(Morning Tea)
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昼食(Lunch)
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アフタヌーンティー(Afternoon Tea)
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夕食(Dinner)
朝食(Breakfast)
朝は比較的自由な形式で提供されることが多く、入居者自身で選択できるスタイルです。
- 主食:
トースト(toast)、シリアル(cereal)、オートミール(oatmeal)、ベーグル、クロワッサン - たんぱく源:
スクランブルエッグ(scrambled eggs)、ベーコン(bacon)、ソーセージ(sausages)など - 卵料理:
ゆで卵(boiled egg)、ポーチドエッグ(poached egg)、フライドエッグ(fried egg)、エッグマフィンなど - 飲み物:
紅茶(tea)、コーヒー(coffee)、ミルク(milk)、ジュース(juice)、ホットチョコレート(hot chocolate)
よく出るシリアルの種類
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Corn Flakes:サクサクした定番。ミルクと相性◎
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Weet-Bix:小麦を固めたブロック状のシリアル。ミルクやバナナと一緒に食べる人が多い。
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Muesli:オーツ麦にナッツやドライフルーツを混ぜた栄養たっぷりの朝食。甘さ控えめで自然派志向の方に人気
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Rice Bubbles:日本のポン菓子のような軽い食感で、子どもや高齢者に人気。
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Special K:ダイエット志向の方に人気の高たんぱく&低カロリーシリアル。
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Nutri-Grain:鉄分やたんぱく質を多く含む、甘めで栄養価の高いシリアル。
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All-Bran:食物繊維が豊富で、便秘予防にも使われるヘルシーなシリアル。
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Sultana Bran:レーズン入りのブランシリアルで、ほんのり甘くて人気です。
モーニングティー(Morning Tea)
午前中の軽食タイム。入居者の活動の合間に提供されます。
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軽食:
ビスケット、スライスケーキ、マフィン、クラッカーとチーズ、フルーツなど
昼食(Lunch)
メインミールのひとつで、温かい料理が提供されます。
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メインディッシュ:
ローストチキン、フィッシュアンドチップス、ラザニア、ビーフシチューなど -
副菜:
マッシュポテト、グリーンピース、温野菜、ミックスサラダなど -
デザート:
フレッシュフルーツ、アイスクリーム、プディング(pudding)、ヨーグルト、カスタード、ゼリー(jelly)、アップルクランブル、ティラミスなど
アフタヌーンティー(Afternoon Tea)
午後の休憩タイムに、お茶や軽い甘いお菓子が出されます。
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軽食:
スコーン(ジャムとクリーム付き)、フルーツケーキ、ショートブレッドなど、ビスケット
夕食(Dinner)
一日の最後の食事で、比較的軽めの内容が多いですが、好みのメインミールを選択できます。
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内容:
スープ(soup)、メインミール(ランチと同様)、サンドイッチ(sandwich)、キッシュ(quiche)、リゾットなど -
エイジドケアでは夕食時に飲酒をする方もいます。赤ワイン、白ワイン、ウィスキーなど
よく使われる食材・料理名とその特徴
たんぱく源(Protein)
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Chicken(チキン)
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Beef(ビーフ)
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Pork(ポーク)
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Salmon(サーモン)
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Egg(エッグ)
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Lamb(ラム)
野菜(Vegetables)
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Mushroom(マッシュルーム)
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Zucchini(ズッキーニ)
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Pumpkin(パンプキン)
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Broccoli(ブロッコリー)
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Cauliflower(カリフラワー)
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Spinach(ほうれん草)
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Cabbage(キャベツ)
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Onion(玉ねぎ)
主食(Staples)
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Rice(ライス)
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Pasta(パスタ)
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Noodles(ヌードル)
調味料(Condiments)
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Gravy Sauce(グレービーソース)
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Butter(バター)
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Vegemite(ベジマイト)
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Mayonnaise(マヨネーズ)
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Mustard(マスタード)
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Tartar sauce(タルタルソース)
デザート(Desserts)
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Crumble(クランブル)
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Sponge Cake(スポンジケーキ)
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Jelly(ゼリー)
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Vanilla Custard(バニラカスタード)
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Parfait (パフェ)
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Sundae (サンデー)
フルーツ(Fruits)
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Banana(バナナ)
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Apple(リンゴ)
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Orange(オレンジ)
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Watermelon(スイカ)
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Kiwi(キウイ)
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Grape(ブドウ)
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Strawberry(イチゴ)
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Melon(メロン)
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Pear (洋梨)
AINの業務と食事介助のポイント
AIN(Assistant in Nursing)として働く上で、食事の準備・配膳・片付け、食事中の見守り、食事介助が重要な業務の一部です。
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アレルギー表示の確認
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食事制限(塩分・糖分・乳製品など)の把握
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とろみ剤や刻み食、ミキサー食の準備
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適切な姿勢を保つためのサポート(椅子・クッション使用など)
食事形態の種類(テクスチャーモディファイド)
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Regular:常食(普通の食事)
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Soft:柔らかく調理された食事(例:マッシュポテト、煮込み料理)
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Minced and Moist:細かく刻まれ、水分を含んだ食事(噛む力が弱い方用)
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Pureed:ペースト状にされた食事(舌で潰せる柔らかさ)
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Liquid:スープやとろみ飲料などの完全流動食
とろみの強さの分類(Thickened Liquids: IDDSI基準)
飲み物やスープなどには、誤嚥を防ぐためにとろみ剤を加えることがあります。とろみの強さは、国際的なIDDSI(International Dysphagia Diet Standardisation Initiative)基準で分類されており、以下のように分かれています:
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Level 0:Thin(さらさら):水やジュースなどそのままの液体。
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Level 1:Slightly Thick(わずかにとろみ):水より少しだけとろみがある。
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Level 2:Mildly Thick(軽度のとろみ):舌で感じる程度にとろっとしている。
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Level 3:Moderately Thick(中程度のとろみ):スプーンからゆっくり落ちる程度のとろみ。
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Level 4:Extremely Thick(非常にとろみが強い):スプーンから落ちず、固形に近い。
とろみの種類や量は医師や言語聴覚士(Speech Pathologist)の指示に従って調整されます。AINは提供時にしっかり確認し、間違いがないよう注意が必要です。
飲み物の提供時によく使われる表現とそのバリエーション
紅茶やコーヒーを提供する際、オーストラリアでは「white」「black」「strong」「weak」などの表現がよく使われます。これらは味の濃さやミルクの有無に関する希望を簡潔に伝えるための用語です。
紅茶・コーヒーの表現例
紅茶(Tea):ティーバッグ + お湯。希望によりミルクや砂糖を追加します。
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White tea:ミルク入りの紅茶
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Black tea:ミルクなしの紅茶
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Strong tea:ティーバッグを長めに浸した濃い紅茶
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Weak tea:ティーバッグを軽く浸した薄い紅茶
コーヒー(Coffee):インスタントコーヒー + お湯 + ミルク。必要であれば砂糖も加えます。
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white coffee(ホワイトコーヒー):ミルク入りのコーヒー
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black coffee(ブラックコーヒー):ミルクなしのコーヒー
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strong coffee(濃いコーヒー):コーヒーの粉を多めに使用
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weak coffee(薄いコーヒー):コーヒーの粉を少なめに使用
よくある会話例:
AIN: “Would you like tea or coffee?”
Resident: “Tea, white and strong, please.”
AIN: “Any sugar?”
Resident: “Just one, thank you.”
おまけ:オーストラリアといえば「ベジマイト」!
ベジマイト(Vegemite)は、オーストラリア人の多くが親しんでいる独特な風味のスプレッドです。酵母エキスから作られ、塩味とコクのある味わいが特徴です。見た目は黒くペースト状で、日本人にはややクセが強く感じられることもあります。
代表的な食べ方
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トーストに塗る:バターを薄く塗ったトーストに、ベジマイトを“うすーく”塗るのがポイント。たっぷり塗るとしょっぱすぎるので要注意。
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チーズと合わせる:トースト+ベジマイト+とろけるチーズはオーストラリアでも人気の組み合わせです。
施設によっては朝食時にトーストとともにベジマイトが提供されており、入居者にリクエストされることも。初めて見る方は驚くかもしれませんが、「オーストラリアならでは」の一品としてぜひ試してみてください。
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最後に:現場で戸惑わないために
エイジドケア施設での食事は、文化や嗜好、健康状態への理解が求められる繊細な業務のひとつです。
「これはどう言えばいいんだろう?」「この料理は何?」と戸惑うこともあるかもしれませんが、ひとつずつ覚えていけば大丈夫!
皆さんが安心して現場に入れるよう、この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
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